神戸地方裁判所 昭和58年(モ)1038号 決定 1983年10月28日
申立人 田島大二郎
主文
本件忌避の申立を却下する。
理由
一 申立の理由
申立人が本件忌避の理由として主張するところは、別紙のとおりである。
二 当裁判所の判断
1 当裁判所豊岡支部昭和五七年(ワ)第一〇三号損害賠償等請求事件及び将来申立人が提起する一切の事件に対する忌避申立について
忌避の対象とされるべき事件は、裁判所に現に係属する特定の具体的事件であって、それ以前(係属前)に担当裁判官を予想して予め忌避の申立をしたり、当該事件につき審理判決が終ったのちにこれを申立たりすることは許されないものと解されるところ、一件記録によれば、本件第一〇三号事件についてはすでに審理を終え昭和五八年三月一日に判決言渡済みであることが明らかであるから、これらの点に関する右申立は、いずれもそれ自体失当といわなければならない。
2 同昭和五八(ワ)第四号同居義務存在確認等請求事件に対する忌避申立について
先ず、申立人の「甲野裁判官は申立人が別件で訴えている被告であるから忌避する。」旨の主張について検討するに、一件記録によれば、申立人の主張する別件(当裁判所豊岡支部昭和五八年(ワ)第二九号、同第三〇号、同第三二号、同第三三号、同第三五号損害賠償等請求各事件)は、いずれも前記第一〇三号事件の審理における右裁判官の訴訟指揮ないし実体上の認定、判断が不当であるとして、これを理由に同裁判官個人と国を共同被告にして国家賠償等を求めているものであることが認められる。
ところで、当該裁判官が担当事件の当事者の一方と別件訴訟において対立当事者の関係にあるような場合には、それが私的利害の対立する通常一般の民事紛争事件であれば格別、前示のようにもっぱら裁判官としての公的職務の執行の当否が問われている国家賠償等の如き事件にあっては、その紛争の特質上(なお、国家賠償法による裁判官個人の賠償責任については、これを否定するのが判例、通説である。)、特段の事情がない限りこの一事のみからは必ずしも忌避事由に当らないとみるのが相当である。
本件の場合、一件記録によるも、甲野裁判官が本件(第四号事件)を担当審理するにつき、申立人から前記のような別訴を提起されていることにより裁判の公正を妨げるべき特段の事情は何ら窺われない。
その他、申立人の主張する忌避理由は、いずれも訴訟指揮ないし実体的判断に対する不服をいうにすぎないから、他に格別の忌避事由が認められない本件においては、結局この点に関する申立も理由がないことに帰する。
3 よって、本件忌避の申立はいずれもこれを却下し、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 永岡正毅 裁判官 岡原剛 大西嘉彦)
<以下省略>